えらいレコードを買ったことがある。
このレコード自体には音声が含まれておりません。「なんのことか?」とおもむろに開いてみるとただの盤が一枚。溝がない。
説明書が入っていて、読むとこのレコードの聞き方(how to listen)が記されていた。
「聴診器を用意して胸に当ててください。あなただけのオリジナルミュージックの始まりです。宇宙に果てが無いのと同様、無限のバリエーションが秘められています。」
とある。「ものは試し」と思ったのかどうなのか、平野君という当時同級生だった人物と二人で聴診器片手にクラスメイトの心音を聞きまくる、という気味の悪いことをした。しかし誰でも彼でもというわけではなくちゃんと面白そうな、特に体に特徴のある人!の後ろの席に座り心音を1時間以上続けて聴くということをした。始めは面白いのだが、ゆるーいテンポなため大体の場合は眠ってしまう。
そんなある日、平野君が太っている友達の後ろに陣取り、いつもの通り聴診器を当てていると、不意に先生が太っている友達を指して質問した。答えが分からずしどろもどろになっている。その後ろで平野君が笑い転げていた。彼はそのまま退席させられた。
「いつかくると思ってたんだよねー」と興奮気味に言い、それから聴診器を持ってこなくなった。
ちなみにこの盤名は“heart beat”というのだが持っているレコードの中でも印象の強いものの一つだ。ただ感心させられる。今度はどんなものに出会えるのだろう?いやぁ、レコードっていいものですね。
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